Assistock – Buttstock type stabilizer
私は野鳥撮影を兼ねたバードウォッチングを趣味にしています。
野鳥の撮影には手持ちでの撮影にこだわりがあって三脚は使用しません。
鳥の姿でもっとも美しいのは飛ぶ姿、もしくは羽を広げている姿だと思っています。
飛んでいる鳥をファインダーにとらえるのに、そして追っていくのには手持ちの方がはるかに分がいいと思っているからです。
三脚ではどうしても初動の遅れ、追従の難しさがあるように思えます。
主に使用しているレンズはNikon Ai-S Nikkor ED 500mm F4Pというマニュアルフォーカスの古いレンズです。
500mm F4でありながらマニュアルフォーカスということもあって3kgちょうどという軽さです。
以前、使用していたAF-S VR Nikkor 300mm f/2.8G IF-EDが2.87kgですからほとんど差異なくすんなり移行できました。
カメラの重量と合わせるとこれぐらいの重量が手持ち撮影できる限界ではないかと考えます。
もちろんもっと重くてもできないことはありません。
暗い森のなかでのサンコウチョウの撮影のときなどは、覚悟を決めてAi-S Nikkor 400mm F2.8 ED IFを担ぎ出します。
このレンズは5.15kgあって短時間での手持ちならば可能ですが、長時間のときはそれはもう体力勝負となります。
手持ち撮影の最たる難点はやはり手振れです。
カメラ、もしくはレンズによる手振れ防止機能も随分進歩してきて、それも一因でOLYMPUS E-3,E-5と愛用してきました。
OLYMPUS E-3,E-5のISに頼りきってきたといってもいいほどです。
もうひとつ手持ちで限界があるのは、何かにとまっている鳥の飛び出しを待っているときです。
これはやはり鳥とのがまんくらべとなりますから、疲れて手を下している時に鳥が飛び出すということはよくあることです。
EVFに疑問を感じながらも、センサーがソニー製となりISO特性が格段に良くなった最新のE-M5を試しに使用するようになりました。
E-M5は画素数も1605万画素に増え、肝心のISも最新の5軸となり、その上軽いので通常ならこちらを主軸とする可能性が大きかったのです。
5軸ISの発売後の評価も高いのですが、しかし自分で使用した感じでは画素数が増えたせいかブレが目立つようになった感が強いのです。
画素数が増えた事以外の要因として考えられるのは、カメラ自体の重量が軽くなったのはとてもありがたいことではあるのですが、それによってレンズを含めたユニット全体の重心が、レンズの先端よりに移動したのではないかという事です。
ユニット全体の重心がレンズの先端よりに移動したことによって、ユニットの重量が左手に多くかかるようになったため、安定性がなくなりブレが大きくなって、進化したISの能力でも対応しきれなくなったのではと考えます。
もっとも、速く飛ぶ鳥を追うことがEVFではやはり難しいので、主軸はE-5を使うという結果になっていますが、暗くてISOを上げなければシャッタースピードが稼げない時などはE-M5を使いたくなります。
ちなみにいろいろな鳥を追ってみた結果、EVFで追うことが可能なのはカモメ類やサギ類などの遅い鳥までで、シギチなどの速さになるととてもついていけず、一度シャッターをきると表示のタイムラグのせいで見失ってしまいます。
E-M5を使う時には、重心の移動によって左手荷重が大きくなったことによる不安定さを補助するための手段をなにか施す必要があります。
一脚を使うというのもひとつの手段ですが、以前使用したときにあまり使い勝手がよくなかった経験があります。たしかベルトに付けて一脚の脚を受ける装具があったと思いますが、あれを使えば幾分良いのかもしれません。などと思いつつ、できればもっとコンパクトで軽量でホールド感の良い物があればといろいろ考えていました。
それで始めの構想としてイメージしたのが、ライフル銃の銃床のように胸にあててささえる脚を一本、そしてもう一ケ所、アームを伸ばして首にかけることで二ケ所で保持できるようにすることで安定するのではないかということです。
イメージがふくらんでくると実際に形としてできるものか、構えた時にどんな感じになるのか、など試してみたくなります。
とりあえず材料に木を使って作れば簡単に出来そうな感じですが、なにはともあれ形として試してみたくて段ボールで車でいうところのクレイモデルのようなものを作ってみました。
さすがに500mmF4Pを乗せるのは無理なのでスコープを乗せてみるとなかなかいい感触。
こうなると実際に早く使って試してみたくなります。
で、かなり雑でしたが急いで作ったのがプロトタイプ。
一番左がプロトタイプ、順にmarkⅠ、Ⅱ、スコープ用のⅢ。
相当、雑な仕上げですが試用には十分です。
本当は始めに描いたイメージ通り首にかけるアームの部分も持っていたのですが、使った板の木目の向きが悪かったせいで力がかかった時にあっけなくポッキリと折れてしまいました。仕方なく、仕様を急遽変更してbuttstock(銃床)だけにしました。
と、いうことで実際に使ってみて効果はあったかということですが、急いで雑に作ったせいか今一つ構えた時のポジションに違和感があったのと、じっくり使ってこちらも慣れないと目に見える効果は現れなかったというところでしょうか。
よくわからないというのが正直なところです。
ただ、使ってみた感触は良かったのでとりあえずもうちょっとちゃんと作ることにしました。
そして出来たのがMarkⅠ。
これはレンズを乗せる台は1cm間隔で4段階、胸にあたる脚は無段階で4cm強、調節できるようにしました。
これでポジション的にはしっくりきましたが、調整可能部分があるとどうしても部品が増えて重くなってしまいます。プロトタイプよりもしっかりとした材を使ったということもあるんですが。
MarkⅠで得た決まったポジションでの寸法と、始めのイメージ通りとにかく軽いものということを形にしたのかMarkⅡです。調整機能は全く無く500mmF4P専用でいたってシンプルです。
これを500mmF4P+E-M5と使い込んでみて効果があるかというところです。
いろいろ考えたり試したりして自作するのは楽しくて子供のころの工作を思い出します。
また、効果の如何にかかわらずとても愛着がわきます。
で、呼び名などを付けようかと。
始めのイメージにあった首にかけるアームを止めてしまったので、実にシンプルで胸に当てる1本脚だけなのでこれはやはりmonopodですね。ただ通常の一脚とは違い銃床(buttstock)タイプのmonopodということでStock monopodというのを考えました。
が、実は登山用の杖(トレッキングポール)のことをストックとも呼び、これをカメラの一脚としても使える商品が既に存在しますので、そちらの商品の方がStock monopodという名称にあてはまりそうです。
安定させてブレを防ぐものという意味の単語はISでも使われているstabilizer。
銃床(stock)タイプのstabilizerということでStock stabilizer。
略してStobilizerという名称にしました。
しかし、木で作った実にシンプルな道具なので完全に名前負けしてます。
しばしこのページ上でもStobilizerにしてましたが、いまひとつしっくりこない。
そんな折にふと浮かんできたのが手持ち撮影を補助する物ということでassist stabilizerなる単語。Assistaなんてのもいいかと思ったのだけれど、stock type assist stabilizerからassisting stock。
Assistockにて決まり。まぁ、どうでもいいことですが。
ただ、始めにイメージしていた首にかける部分があった方がより安定しているのではないかという事が気になります。
しかし、500mmのセットの重量に耐えるにはよほどしっかりした材を使う必要がありそうだし、なによりMarkⅡを使った感じでは首にかけるアームがあるととても邪魔になるということがわかり、やはり実用的ではないと判断しました。
それではスコープ用にと作成したのが首にかけるアームをもつMarkⅢです。
これが始めにイメージした形です。
まっすぐ後ろにボディを伸ばしてアームをつけると、やはり大きなものになってしまい、取り回しがうっとうしいです。
これもスコープを乗せる台、首にかけるアーム、胸にあたる脚はそれぞれ調節が可能です。
私のスコープはNikon EDⅢ+40×DS接眼レンズという組み合わせですが、手持ちではさすがにブレブレで難しいものがあります。
首アーム付Assistockを使うと、多少のゆれはありますがちゃんと見る事が出来るようになります。それなりに効果はあり、使えそうです。
ただ最近は重くて荷物になるのでスコープを持っていくことがないんですよねー。
首にかけたほうが引っ掛かりやすく安定するかと思ったのですが、アームを下に向けて肩にかけるのも一つの方法です。
アームの部分だけ作ればよいので寸法を採ってみると、首かけ用のアームよりも10cmほど長く作る必要があります。ますます大きくなってしまいあまり実用的ではなさそうなんですね。
でも、何事もやってみないとわかりませんから、余っていた材料で作ってみました。
肩というか背中にかけるタイプは引っ掛けるアームの形状かもしくは引っ掛け方に工夫が必要です。
しっかり掛からないというか、ただ引っ掛けようとしても引っ掛かるところがないというか。
試用した感じでは首に掛ける方がしっかりして安定しています。
私の作った形状では、首に掛けるタイプの方が合っているという事だと思います。
ちょっと調べてみるとエツミからハンズフリーショルダーパッドE-6313という、小型のカムコーダーやデジタルカメラを装着しハンズフリーで使えるカメラホルダーなる商品が販売されていました。
肩と胸で支えるタイプで見たところ一度使って見たくなるほど良さそうですが、耐重量600g、本体重量880gで価格が10,290円とのこと。
耐重量600gでは500mmF4のセットはまったく無理そうです。
形はとても良さそうなんですけどね。
amazonで探すと似たようなものが4,000円台であるし、なんとエツミと全く同じようなものが2,680円である。なんだろなぁ。
探せばいろいろあるもんです。
最後にもう一つ作りました。
やはり実用で使えそうならスコープもフィールドへ持って出たいと思いまして。
そうなると、調整機能も必要ないしできるだけ軽い方がいいです。
ということで、Nikon EDⅢ専用タイプです。
最適なポジションを得て、出来るだけコンパクトにし、材料はラワン材を使って軽くなるようにしました。
とはいっても、やはり首に掛けるアームの部分は邪魔になります。
使用しない時は、取り外して足に固定してアームが邪魔にならないようにしました。
先端部分は丸みを帯びた複数の面で構成されたデザインにしました。
これでスコープをフィールドに持って行く気になればいいんだけどなぁ。
追記:
作ってから随分経ちました。
さて、実際にフィールドに持って出た使用感はというと。
首にも掛けるタイプのフィールドスコープ版は効果絶大です。
40倍の接眼レンズは手持ちで観察するのはほぼ不可能ですが、手振れも少なくなり実用になります。
スコープの場合は慣れていないと目と接眼レンズの位置ですぐに見えなくなってしまうのですが、この点が位置が定まってとても見やすくなります。
車を運転しつつ遠くの鳥を観察しているときは非常に重宝しました。
だた、カメラを付けて撮影するというのはちょっと無理ですね。
あくまでも観察において実用になるというレベルです。
そして肝心の撮影用の500mmレンズ専用タイプはというと。
始めのうちは効果自体よくわからない感じだったのですが、使い慣れてくるとやはり暗いときなどシャッタースピードが遅くなってしまうときなどの条件が悪いときに特に効果を感じるようになりました。
他は、少し高い位置を狙っている時や飛出し待ちの時にとても助けになります。
もう今ではこれ無くしては不安を感じるほどになってしまいました。