My favorite books about birds
鳥の撮影を始めるきっかけとなった本や鳥に関しての知識を学んだ本、鳥の種別などを調べる本など日頃お世話になっている本で、私の書棚に並ぶ本の紹介です。鳥の本が増えていくのも楽しみのひとつです。
ブボがいた夏―アメリカワシミミズクと私 (ナチュラル・ヒストリー選書)
ベルンド ハインリッチ Bernd Heinrich
渡辺政隆 訳
平河出版社 1993-08
ISBN : 978-4892032271
この「ブボがいた夏」は、まだ全く鳥見ということに興味のなかったころに読んだ本です。いつものように仕事帰りに立ち寄った本屋さんで、このきれいなカバーのフクロウに引き寄せられて手にとったのを覚えています。初版が1993年ということなので、もう、それから27年もの月日が過ぎ去ったという事になりますね。
ひとことで言って最高です。
平たくいろいろな動物好きだった私を、なかでも特にフクロウ好き(それも強度な)にさせた、とても影響力のあった一冊と言えます。
ナチュラリストである著者が、大雪の日に折れた木にあった巣から落ちて雪にうもれていたワシミミズクのヒナを救いだし、飼育しながら観察した記録です。
研究者であるがゆえの詳細な観察眼と表現、そしてこれはたぶん翻訳した方のうまさもあると思うのですが、ワシミミズクのブボのじつに生き生きとした様子が伝わってきます。その生き生きとした情景がイメージしやすく、思わず微笑んでしまう場面も多々あります。所々に挿入されている著者自身の手によるイラストも素晴らしくてその手助けとなります。存在自体が凶器である猛禽と人間が築いた友情の証。この本でも鳥は本能の反射だけで行動するロボットではないことを改めて実感することができます。
この本は読み進んで、最後に近づいてくるととても寂しい感じがしました。
フクロウやミミズクを見てみたいと思ってもなかなか見れるものではありません。
そんなときにこの本を読み返していた覚えがあります。最低でも5回は読んでいるのではないかと。
The Birds of Europe: With North Africa and the Middle East
(Helm Field Guides)
Lars Jonsson
Christopher Helm Publishers Ltd (1992/10/29)
ISBN : 978-0713680966
この本との出会いはなんというか、本当に偶然で運命的とさえ思えるものでした。
古本市の雑多な棚に並べられていたところ、背表紙のカワセミのイラストが目につき、引き寄せられるようにして手にして見た表紙のRed-footed Falconに魅了されてしまいました。
「ブボがいた夏」で相当なフクロウ好きとなっていましたが、鳥全般に関しての興味も随分と増していたようです。
それまで図鑑というと写真を使っているものと、勝手に思い込んでいたもので、こういうイラストを使っていて、しかもちゃんとした本格的な図鑑というものがあるんだということも驚きだったように思います。
この図鑑は写真は一切なく、後述するかの有名なcollins BIRD GUIDEと同じようにイラストを使っています。collinsの方がより細かいタッチで描かれているような感じもしますが、このLars Jonssonさんのイラストの方がひとつひとつがより大きく、その鳥の生息する環境が背景に描いてあるものもあります。
エリマキシギなどはレックでの様子が個々のオスの夏羽のバリエーションと合わせて、見開き2ページに描画してあったりします。
鳥達に表情があっていきいきしているというか、動きがあるように感じられるのですね。図鑑というよりも画集という方があっているように思います。
イラストが秀逸で鳥好きならばただ見ているだけでも楽しめる素晴らしい図鑑です。
中のイラストをスキャンしてアップしたくなりますが、そんなことは著作権上いけません。
この本はフクロウ好きだった私を広い鳥好きに導いてくれた本と言えると思います。
「ブボ・・・」といい、この「Birds of・・・」といい、良き本との出会いで、現在の鳥撮という楽しみがあります。
Shorebirds of North America, Europe, and Asia: A Photographic Guide
Richard Chandler
Princeton Univ Pr 2009-07-06
ISBN : 978-0691142814
鳥撮を始めた頃は東京港野鳥公園によく行っていました。
そこで春、秋の渡りの季節に良く見れたのはオオソリハシシギ、アオアシシギ、ソリハシシギ、コチドリ、メダイチドリ、イソシギ等のシギチ達でした。
オオソリとかアオアシ、ソリハシシギ等を初めて見た時は、こんな鳥がいたのかと驚いたことを覚えています。驚きとともによく撮影したもので、その分愛着も増えたように思います。
この図鑑は画像が豊富に掲載してあり、種の判別に迷ったときなどはよくお世話になります。画像が豊富なことと中には飛んでいるところの画像もあり、日本では見る事が出来ないCourserやLittle Pratincoleなどの鳥達も載っているので、この図鑑もただ見ているだけで楽しめる図鑑です。
この本を見て、いつの日かLittle PratincoleやCream-coloured Courserを見に行きたいなぁと思いを馳せます。
洋書なので当然のこと英語なので、全て読むのはなかなか大変なことではあるのですが、とても興味のあった「Seasonal plumage changes」と「Hybrid shorebirds」の項目をなんとか訳して読んでみましたが、これがやはりとても興味深い内容が多いです。
「Hybrid shorebirds」から例を挙げれば、過去に知られている有名な雑種である、アメリカウズラシギのオスとサルハマシギのメスの子であった『Cox’s Sandpiper』や、同じくサルハマシギとウズラシギの雑種であると確認されていた『Cooper’s Sandpiper』。
野生においてshorebirdの雑種が生じる二つの環境が考察されていて、一つはある種が繁殖している通常の繁殖地において、別の近縁種の個体が孤立して存在してしまった場合。そしてもう一つは、一夫多妻式の乱交性で素早いペアリングの交配の方式を持っている種に起こりうるということ。前述のアメリカウズラシギ、ウズラシギは一夫多妻式の乱交性であり、サルハマシギは即応性ペアリングの方式に含まれるということです。
またそれとは別に、オジロトウネンやヨーロッパトウネンの繁殖方法もとてもおもしろい。オジロトウネンの繁殖方式は「rapid multi-clutch system」と呼んでいます。「即応性複巣一腹システム」とでも訳せばいいのでしょうか。Wikiには「複婚、二重巣卵体制」と書いてあります。直訳すると「メスが二つかそれ以上の一腹卵を素早く連続して産み、一羽かそれ以上のオスが卵を抱き、最後の一腹の卵はメス自身が抱卵する」ということで、Wikiの説明では「メスがあるオスと番いになって産卵後、別のオスと番いになって産卵を行うが、第1の巣ではオスが抱卵、育雛を行い、第2の巣ではメスが抱卵、育雛を行う」ということ。
なかなかわかりづらいのですが、メスは複数のオスとつがいとなり、それぞれのオスが用意した巣にそれぞれ一腹の卵セットを産んでいき、それらの巣の卵はそれぞれのオスが抱卵し、メスは最後に自分用の巣に一腹を産んでそれはメス自らが抱卵し面倒をみるということだと思います。
これは短い北極地方の夏に子供を生み出すことを最大にする適応であるということですが、ヨーロッパトウネンはちょっと違っていて「double-clutch system」と呼び、この場合は単婚であり、メスは二つの巣にそれぞれ一複の卵セットを産み、一つはオスが、もう一つの方はメスが抱卵して孵すということです。似たシステムであり、オジロトウネンの即応性乱交性ペアリング方式によってこれら二種の雑種が生じる事が説明できるかもしれないということでした。
面白いですね。こんな繁殖システムは、似ているようなものでタマシギでしか聞いたことがありませんでしたが。さすがはshorebird専門書ということではないでしょうか。
Owls of the World: A Photographic Guide
Heimo Mikkola is the world’s best known owl expert.
Christopher Helm Publishers Ltd (2012/8/30)
ISBN : 978-1408130285
フクロウ好きにはたまらない素晴らしい図鑑です。
画像も文句なく豊富に掲載されています。
中のページのレイアウトなどは前述のPrincetonのShorebirds・・・と、とても似ているというかほとんど同じ造りです。
編集を手がけたところに共通する部分があるのでしょうか。
さまざまなフクロウを見ていくとオオコノハズクの画像に見慣れた景色があります。
これは忘れもしない明治神宮にいた個体です。
実際に自分も直接見て、撮影したことのある個体が図鑑に載っているというのもなんだかとても身近に感じられてうれしく思いました。
ますますこの本が好きになりますし、なにより画像が充実していて余分なものが一切なく見応えのある図鑑です。
ちなみに、上の画像は、前のEditionのもので、リンクはSecond Editionへのリンクとなっています。
2013年11月に東京は江東区の、とても林とも言えない幅の狭い都市公園に現れたミゾゴイ。この少し前に、大阪は梅田のビルの狭間にある庭園に、人を恐れずとても愛嬌が良いといわれたミゾゴイが現れて話題になっていました。ミゾゴイと言えば本当に見る事が難しい鳥。もちろん見た事など無く、その画像をうらやましく眺め、見たいという思いを募らせつつも、大阪ではとほぼあきらめていたところに飛び込んできた出現情報でした。諦めていただけに、うれしいことこの上ない出現だったのです。
信じられない程に人に対する警戒心が無く、餌取りに集中していると動かずにいる人の1メートルも無い距離にまで近寄って来ていました。手を伸ばせば頭に触れられるほどに。通常で考えれば、どうにも異常な光景にしか思えませんでした。
そもそもどうしてあんな林とも言えないところにいたのでしょうか。少し飛べばもっとしっかりとした、身を隠せる木の多いところがいくらでもあっただろうに。
確かに飛んでもいたし、羽も全く痛んではいないようでした。餌もミミズを土の中から引っ張り出して捕えていたし、無神経な人が撒いたミミズも少し食べただけで、すぐに興味を失って餌場を変えてしまいました。餌に関しては、全く人を頼ってはいないと思えました。採餌の様子を観察するかぎりでは野生個体とも十分に思えたのです。それでも、聞こえてきた噂話には半信半疑であったにしても、あの異常な距離感は、人の手が全く関わった事が無い野生個体とはどうしても思えませんでした。経験、知識が無いと言われれば返す言葉はありません、そのとおりです。
カメラマンが近づく以上に、それを真似て一般の方が携帯で撮影しようと追いかけまわしているのを見ると、どうしても危機感を感じないではいられませんでした。それに、もし飼育下にあった個体であるなら、ネコの存在はとても脅威になるのではと。
その後、保護されたと聞いて、ほっとしたというのが正直なところでした。しかし、とても残念な事にこのミゾゴイは保護された後に死んでしまったとのことです。
保護されてホッとしたとはいうものの、本当に飼われていたのかという真相がどうにも気になっていました。何か情報はないものかと探していてたどり着いたのがこの本の著者の川名国男氏のページ。氏は大阪・梅田の、東京のミゾゴイと同じく全く警戒心が無いといわれていた個体について考察されていて、野生でもあれほどまでに人に対して警戒心が無くなることを、ご自身の観察経験から肯定されています。
私の所有している何冊かの図鑑では、やはり情報が少なく成鳥の羽衣すらもはっきりとはわからず、この本にてやっと確認することができました。東京の個体は嘴が黒くはないので幼鳥とは思っていましたが、頭が黒く無く、後頭から首にかけての赤茶のたてがみの様な羽が既にあることがよくわからない点ではあったのです。成長度合いや雌雄の違いなどはまだよくわかっていないようですが、それでも氏の観察記録の成果でミゾゴイに関して多くの事を知ることが出来ます。渡来から始まって囀りからつがい形成、営巣、抱卵、育雛、営巣環境や擬態に関する事等、貴重な観察結果を豊富な画像と共に共有させていただくことが出来ます。特に興味深いと思ったのは完全な昼行性であること、ヒナが給餌を受ける際に行う分身の術のような餌乞い行動、営巣場所と巣そのものの構造、人の手が加わった環境を採餌場として好んで使う事など。氏の和名の由来に関する考察で、ゴイはゴイサギではなく五位の色から来たものという事も成鳥の色を画像で見ればとても説得力があります。
巻末の発行人を見ると著者ご本人のお名前なので自費出版なさったのだと思います。貴重な観察記録をシェアしていただいたことに感謝し、ミゾゴイに対する氏の思いに尊敬の念を抱かずにはいられません。
川名国男氏のミゾゴイに関するサイト
「ミゾゴイの生態と習性~種の保護と生息地の保全について考える」
と、
BirdLife INTERNAIONALのミゾゴイのページ
「里山のシンボル、ミゾゴイを守る」
このページではミゾゴイのさえずりが聞けたり、繁殖中のヒナへの給餌シーンのムービーを見る事が出来ます。
Collins Bird Guide
Lars Svensson Peter J. Grant
Killian Mullarney Dan Zetterstrom(イラスト)
Collins 2008-03-29
ISBN : 978-0007268146
言わずと知れたバードウォッチャー必見のバードガイドです。
とても細かく丁寧に描かれたとても美しいイラストで構成されています。
初めてヤマセミを見た時にその美しさと愛嬌のある仕草に魅了され、そしてもっとヤマセミの事を学びたくなってこの2冊の本を読みました。
著者の名前が少し違いますが、経歴から判断して同じ方です。
「ヤマセミの四季」は実際にヤマセミを観察していた時の観察記録で、「ヤマセミの暮らし」の方はヤマセミの観察や飼育から得た豊富な経験と知識からの生態を教えていただいてます。2冊の発行の間隔はほぼ10年ほどありますね。
ヤマセミの事を知りたければこれらの本を読むのが早いです。
ところで「ヤマセミの暮らし」の中の「ヤマセミの保護飼育」の章に著者の愛犬ポチの話が出てきます。このポチと著者の信頼関係、またポチとヤマセミの信頼関係が素晴らしく最高です。
私も幼いころから小型犬が家にいて家族として一緒に生活していましたが、犬好きにはこのポチの話はたまらないと思います。ポチの話はたった8ページしかありませんが、このポチの話だけでもとても良い本です。
私がもっとも多く足を運ぶフィールドといえば三番瀬になると思います。
今では、わずかに残された貴重な東京湾の干潟。
かつては海がひくとはるかに広がる広漠たる光景だったという東京湾の干潟。
その当時の干潟での鳥見のことがよくわかる本です。まだガンが渡って来ていた頃の。2015年の冬には300羽以上を数えることができたミヤコドリがまれにたった一羽姿を見せることが有るか無いかと言う頃。
私も東京湾の干潟でハクガンを見たかったなぁ。
見せかけの豊かさと経済発展のために東京湾の干潟をどんどん埋め固め、かけがえの無いとても多くの物を失ってしまったということを、改めて実感させられると胸が締め付けられる思いがします。
わずかに残った貴重な三番瀬も、年々、干潟の生物たちが少なくなっていくのを実感します。もう渡りのシギチたちはここを中継地や越冬地としては利用しなくなってしまうのではないか。大震災の後、すでに瀕死となっているのに、未だに人為的な潮干狩り場として利用し、三番瀬の息の根を止めようとしているかのようだ。
こちらの姿が丸見えの干潟での鳥見。やはり考えることは同じ様な事で共感できることにうれしくなってしまう。
今では、まず情報ありきになってしまった鳥見。
しかし、本当の楽しみは何と出会うかわからないところでの鳥達との偶然の出会いにあると思います。そしてそれを自分自身で見つける事。
珍鳥パパラッチや餌付けなどのヤラセに関しても、著者とほぼ共通の考えを持っていられたこともうれしく思ったところです。
この本を読まずして干潟での鳥見を語る事無かれという本です。
いや、干潟だけでは無く、鳥見人全て必読のバイブルと言うべき本です。
この本との出会いはある意味で衝撃的でもあったのです。
こんなふうに鳥達の存在を感じられるなんて、と。
スズメの鳴き声で朝の時間を感じ、サンコウチョウの声で光がよみがえり夜明けを知る。なんてすごいことなのだろうかと。
こうなふうに鳥達の声を感じてみたい。
どこそこに珍しい鳥が来ていると聞き、大砲の列に必死で自分の場所を確保し、いるとわかっている鳥が出てくるのをひたすらに待つ、ということになんだか疑問を感じ、あまり喜びも感じなくなっていた昨今。鳥達の存在の感じ方を、改めて考え直させられたという気がします。
この本との出会いの後、鳥見の楽しみにおいての違った面が増えたというか、それまでとは少し見方が変わったように思います。
ある小さなスズメの記録
人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 (文春文庫)
クレア キップス (著), Clare Kipps (原著)
梨木 香歩 (翻訳)
文藝春秋 (2015/1/5)
ISBN : 978-4167902803
厚い紙で作られたカバーに収められた、落ち着いた上品な装丁を施された少し薄めの本。手に取った時にこの本に関わった方たちの思いが伝わって来るようで、内容の質の高さを感じずにはいられなかった本です。
鳥と多くの時間を共にし、惜しみなく愛情を注いだ人だけにしか得ることができない信頼関係を、この著者も築いています。ただ、それだけではなく、ピアノから歌うことを学ぶなど鳥の習性に関する興味深い部分も多く知ることが出来る、資料としてもとても貴重な内容になっています。
「ブボ・・・」などもそうですが、こういう本を読むとうらやましく思います。自分も・・・、とついつい思ってしまいますが、それに関してもこの著者の言っている事に全く同感であり、正しくもあると思うのです。
「野生の鳥は基本的には野にあるべき。」であり、また「動物が、明らかに彼らの性質や傾向と反するのに、人間の余興のためずっと働かされることには賛成できない。」と。本当にそう思います。
最近、良く耳にするフクロウカフェなどにはとても疑問を感じてしまう。本来は天敵である大型のフクロウと一緒に居させられている小型のフクロウたちのことを考えてしまう。フクロウたちだけじゃなく、他の猛禽にしても、犬や猫とは異なり人と一緒にいることを元来好まない動物たちであろうと。フクロウが本来居るべき場所はカフェでないことは確かな事です。
本当にその相手のことを好きであるなら、相手の生きている本来の姿や習性を重んじ、相手の自由こそが最も重要な事として尊重できるはずです。閉じ込めて自由を奪い、支配することなどもってのほかだと。
翻訳された方が上手いのでしょうね、文章的にも魅力的なのではないかと思います。一度読み終わった後、すぐに続けて二度目を読んでしまいました。私は英語はあまり得意ではないのですが、ふと、原文を読んでみたくなったほどです。
こういう本が広く読まれればいいなぁ、と思う本です。是非、一度手に取ってみてはいかがですか。
小鳥との語らい
Birds as Individuals
レン・ハワード Len Howard (著)
思索社 1980
イングランド南東部に位置するサセックス (Sussex)にある、著者の小さな別荘の庭とその周辺に棲む小鳥たちの観察の手記です。
かなり古い本で、1952 Originally published となっています。それから後、鳥に関しての多くのことがわかってきたわけなので、んんっ!、という部分もあったりするのですが、それでも興味深い内容がたくさんの本で、とても読む価値のあった良い本でした。
主に出てくるのはシジュウカラ、ロビン、クロウタドリなのですが、それら小鳥たちの個々の個性豊かなこと、そして知性の高さの違いなど、観察を通して知ったことを教えてくれています。人間一人一人をちゃんと見分けていて、それがかなり離れた場所からでも見分けていることとか、他の親が見捨ててしまった巣立ちひなを養子にして自らの子と一緒に育てた親がいたとか、なかなか驚くべきことが書かれています。
この本を知ったのは、「鳥脳力 渡辺茂著」という本の中に出てきたからなのですが、相当に古い本なので買おうと思ってもなかなか難しいようです。私は都内在住なのですが、どこかの図書館にありそうな気がして探してみたところ、お隣の文京区の図書館で見つけました。その区に住んでいなくても借りることができますし、予約すれば、その本のある区内の一番都合の良い図書館で受け取ることができます。ただし、当然のこと会員登録しなければいけません。
Gulls of Europe, Asia and North America
(Helm Identification Guides)
Klaus Malling Olsen(著)
Hans Larsson(イラスト)
Christopher Helm Publishers Ltd (2004/9/20)
ISBN : 978-0713670875
前々からちゃんとカモメの勉強をしないと、と思っていましたが、やっと本格的にカモメ達を見ることを始めた時にこの本と出会いました。
カモメの図鑑というとやはりこれしかないという感じですか。
それぞれの種においてそれぞれのcalendar yearにおける静止している姿と羽を広げ飛んでいる姿をイラストで表示してあり、それとは別に実写画像も掲載してあります。実写画像もそれなりに豊富ではあるのですが、セグロの若鳥などバリエーションが幅広い物はもう少しあればという感じもあります。あとは初列の白斑、黒斑のパターンが、紛らわしい種に関して何例かづつ掲載してあり、これがとても重宝します。というか、これがこの本のもの凄く秀逸な部分の一つでもあります。
しかし、改めてカモメの識別は難解です。なんといっても若い個体たち。とにかく、たくさんの個体を見るしかないようです。
カモメというと冬季、関東では銚子ということになりますが、実は都内にもここが?と驚くべきカモメたちを見れるポイントがあります。
それは皇居の日比谷濠。そうです、馬場先濠でも桜田濠でもなく日比谷濠限定なんですね。ちなみに馬場先濠はキンクロハジロ達やユリカモメ、桜田濠はヨシガモやオカヨシガモ、内堀に入るとハシビロガモが多いと言う様にちゃんと棲み分けが出来ているのが面白いところです。
セグロカモメなどの大型カモメたちは日比谷濠に水浴びにやってきます。ですからここへやってくる個体は必ずと言って良いほど水浴びをします。セグロやオオセグロ、シロカモメもカナダカモメもバシャバシャとダイナミックに暴れまくります。羽をひろげているところはもちろん、飛んでいくところも割と近くで見ることができます。
羽を広げてくれるので初列の白斑、黒斑の具合も良く見てとれます。この図鑑には初列の斑のサンプルがいく例か掲載されているので、とても重宝します。
この本で勉強したおかげかは定かではありませんが、お堀でのカモメウォッチを始めたその冬にアイスランドカモメ(クムリーン)も見ることができました。
そのクムリーンの識別に自信を持って決定的と出来たのは、その初列の斑のパターンのおかげでもありました。
カモメに興味を持つことで、三番瀬などでもそれまであまり見もしなかったカモメたちにも興味が向くようになり、鳥見の世界がとても広くなったという実感があります。
三番瀬でワシカモメを見つけた時も、他の人たちはほとんど興味が無く、気づいてもいないようでしたが、なんだか自分だけ得したような気分になったものです。
追伸。
オリンピックを間近に控えた2020年の冬。何度か日比谷濠に出掛けましたが、大型カモメの姿を見れることはほとんどなくなってしまいました。一回だけは100近くの数を数えることができましたが、あとは見れても二つ三つという具合。大都会東京のど真ん中での大型カモメたちの観察という、まったくもって稀有な状況は、もう失われてしまったようです。築地市場移転、オリンピックの工事、温暖化、それらの何が大きな要因となったのかはわかりかねます。どれか一つだけなら、ここまで極端になくなってしまうこともなかったのかもしれませんが。
言わずと知れたカモメウォッチャー必携の本。なにはともあれこの本を端から端まで読んで頭の中に叩き込んでこんでおかないとはじまらないという本です。
思うにカモメを見に来ている人は、必ずこの本をバッグに忍ばせているに違いない。荷物が多いバードウォッチャーには小さくて軽いのもとてもありがたい本です。
Dutch Birding VOLUME 38
Identification of the Larus canus complex
Peter Adriaens & Chris Gibbins (著)
Dutch Birding (2016 No.1)
Larus canus Mew Gull は4亜種からなるとされています。
その4亜種を識別するための、特徴の詳細を調査し、その結果が掲載されている本というか冊子です。今までほとんど知られていなかった、その4亜種のそれぞれの特徴の違いが、この冊子で明らかにされています。
たった64ページしかない冊子ですが、その内容は非常に充実したものとなっています。
私自身、カモメを観察していて、その初列などのバリエーションの多さを見るのが楽しみの一つとなっていましたが、それらは全てがkamtschatschensis なのか、それとも別の亜種が含まれているのか、その判断のしようが無かったという事が実状だったのです。しかし、一目見た時に、これは他と違う!という二つの個体との出会いがあり、その疑問を晴らしたい思いが、この本へと結びつけたのです。
それにしても、今まで霧が深くかかってほとんど先が見えないような状態だったのが、この本にてきれいさっぱり晴れわたったという感じすらします。
ちなみに今まで brachyrhynchus (コカモメ)の特徴としてp8 のムーンが大きい事が言われてきました。しかし、この本によるとkamtschatschensis の10%が同様のp8ムーンを有しているということで、逆に20%ほどの brachyrhynchus にはp8のムーンが細く小さいかまたは全く無いということです。
そして、この著者たちの調査によれば、brachyrhynchus においてはこの亜種だけが有する特徴があって、それは p9 にはっきりとした(上からはっきりと確認することが出来る)ムーンを持っている事だとのこと。18%の brachyrhynchus がこのはっきりしたp9ムーンを有していたとの事で、ほぼ1/5の brachyrhynchus はこのp9ムーンで識別できるという事になります。他の亜種においては、この p9 のムーンを備えている個体は皆無だったということです(never has を使っています)。
この本の最も特筆すべき点は、初列の個々の特徴により該当するもの(キーと呼んでいます)を選んでいくと種の判別ができる表が、adult と second-cycle に用意されていることです。なかなか言葉での説明が難しいのですが、私が試したものが« Mew gull primary pattern »にあります。少しその内容を見ることができると思います。
ちなみに、私はNHBSというイギリスの本屋さんからネットで購入しました。注文した日から発送までに二週間かかり、その後、一週間で手元に届きました。発送に時間がかかっていますが、在庫が無かったのでしょうか?よくわかりません。それでも、注文した時に書いてあった発送予定日よりも、結局、5日ほど早く発送されました。
本£19.99 + 送料£7.50 = £27.49 * ¥145.99(ポンド 換算レート)で¥4,013 でした。全く高い買い物だとは思っていませんね。
セグロカモメの世界 (1975年) (世界動物記シリーズ〈11 今西錦司監修〉)
ニコ・ティンバーゲン (著) 今西 錦司(監修)
安部 直哉 (翻訳), 斉藤 隆司 (翻訳)
思索社 (1975)
ASIN : B000JA2HWA
カモメ達を見ているとその行動には、何か思う事があっての振る舞いという感じがしていました。きっとカモメ達もカラス達のように頭が良いのではと。もしかするとそれ以上なのかもしれないと。
しかしこの本によれば、実際のところはそれほどでもないであろうとのことでした。
一例としては、セグロカモメもカラスがやるように、貝など堅いものをくわえて飛び上がり、高い所から落とすという事をやるとのこと。その行動自体は知能が高いように思われますが、落とす場所に関しては全く無頓着だということで、柔らかい砂地に何度も繰り返し落としてみたり、水上であったり草が生い茂ったところであったりするそうです。結果、落とした獲物を失くしてしまったりすることが良くあるとのことで・・・、それってちょっと悲しいことかもしれません。それゆえに、これは生得的(遺伝的)な機能であり、学習によって得たものではないということがわかるとのことです。
この本の発行が昭和50年ということで、ここに記述されている観察及び実験自体が相当に時間が経過してしまったものではあります。現在においてはもっと多くの事が既知の事実となっているものと思われます。しかしセグロカモメの多くの事を、この本から知ることができることは間違いありません。
例えば、相手に繁殖能力がある限りは同じ相手とだけ添い遂げる一夫一妻性であるとか。越冬期はつがいではなく、大きな群れで行動するので、すでにつがいになっているペアは、繁殖期が近くなると大きな群れの中から相手を探しだし、ペアとなって繁殖地に戻ってくるということです。ちゃんと個体識別がなされているということになります。
そして新しくつがいを形成するときには、そのイニシアチブを握っているのはメスだということ。普通、鳥達の恋のアプローチというと、オスがさえずったり、ダンスなどのディスプレイをするなど、オスの方からアプローチするのが一般的だと思います。セグロカモメに関しては、メスの方からアプローチが始まるとのことで、これはちょっと意外でした。
他に興味深いのは、自らの卵の認識において。自分の巣にある卵はもちろん温めます。が、巣から離れた所にある卵は食べてしまうとのこと。自分の巣そのもので識別しているということと、親鳥が離れ、無防備になっている卵は常に近くで営巣している他の個体に狙われているということです。ただこれはやはりコロニーの食糧事情が原因になるようではあります。ちなみにまだ繁殖に参加しない若鳥たちも、無防備となった卵やヒナを獲物にしようとねらっているとのこと。なかなか凄まじいです。
相手の事が色々とわかってくると、より身近に感じられるようになります。観察するにしても、より多くの事を知っていればそれまでとは違ったところも見えてくるはず。
この本も実は次の樋口先生の本つながりだったりします。
樋口先生の本は素晴らしいです。
どちらももうかなり以前に発行された本ではありますが。
目からうろこな知識の宝庫とでもいいますか。
おもしろいし勉強になるしで、立て続けに三冊読んでしまいました。ディヴィッド・ラックの『進化-ガンカモ類の多様な世界』も樋口先生絡みでした。
なかでも特に進化の項目は勉強になります。
これらの本を読んでいたのは2015年の冬。
三番瀬には例のオバシギ×アライソシギの交雑と考えられる個体が越冬していましたし、見れて喜び一杯だった後楽園のアカハジロを交雑個体だと言う方がいるし、じゅん菜池では太く目立つアイリングのある特異なヒドリガモがいたりと、変わり種個体がいくつもいたので、なぜ別種において交雑がおきるのかということにとても興味があったのです。
そんな時にまさに樋口先生の本はタイムリーだったというわけで。
交雑が起きるにはそれぞれの種の繁殖地が近いということが必須ということを、誰かに聞いてそう思い込んでいたのですが、そんな単純なことでは全く無く、むしろ通常ではあまり関わっていないということの方がより重要であるということがわかりました。
実は白状しますと、私は例のたぶんオバシギ×アライソシギにおいて、始めは繁殖地の近さからコオバシギ×アライソシギの方が可能性が高いと考えていたんですね。しかし、繁殖羽に変わっていく様を見ると、どうもやはりアライソの相手はオバシギでほぼ間違いないように思えてきました。樋口先生とラックの進化に関する部分の内容は、まさにそれを裏付けるようであったわけです。
こういう知識は知っているのと知らないのでは思考する範囲や見方が極端に違ってしまいます。
とてもありがたい本であったのです。こういった本との出会いは本当に喜ばしい事です。
この本を知ったのは、上の樋口先生の本からのつながりです。
同じく樋口先生の所で書いたように、アカハジロや変わったヒドリガモの存在でカモ達の進化や交雑といったことにとても興味がわいていました。
そんな時に、やはりこの本もまさに打って付けだったわけですね。
この本もやはり進化や種の分化ということに関してとても勉強になりました。
例のアイリングヒドリガモのことも、樋口先生とこのラックの本で得た知識によってちょっと閃いたところがあって、ド素人による何の根拠もない浅はかな考えながら、いろいろと考えを巡らせたりしたのです。
その鍵となったのはハワイのレイサン島にいる島固有種のレイサンマガモ。そして別の図鑑で見たアンダマン諸島にいる同じくその周辺の固有種であるアンダマンガモ。
どちらもヒドリガモと同じくマガモ属。そして例のアイリングヒドリガモと似たような太く目立つ白いアイリングが特徴となっています。
そこから考えが始まって行くわけですが、その全量はここを。
果たしてただの素人の考えですが、あれこれと辻褄が合う様に考えをまとめていくのも楽しいことです。
それも知識があってのことではあります。
ロビンの生活 (1973年)
(世界動物記シリーズ〈1 今西錦司監修〉)
ディヴィッド・ラック (著)
浦本 昌紀 (翻訳), 安部 直哉 (翻訳)
思索社 (1973)
ASIN : B000J9ZYGC
天上の鳥 アマツバメ
―オックスフォード大学博物館の塔にて
ディヴィッド・ラック (著), David Lack (原著)
丸 武志 (翻訳)
平河出版社 (1997/09)
ISBN : 978-4892032882
飛ぶということに最も特化し、進化したといわれているアマツバメ。
地面に降りたり、何かにとまったりすることは営巣時期を除けばほとんど無く、その生活のほとんど全て、水のみ、水浴びはもちろん、交尾や寝ることさえも飛びながらという、なんとも信じがたき、まさに驚くべき鳥なのです。
しかし、いったいどうやって飛びながら寝ているのか?
と、いうことには、この本の出版当時においてはまだよくわからなかったのか、詳細はありません。と、いっても、現在にいたってもまだあまりわかってはいないようです。飛びながらの交尾に関しては記述があり、やはり驚かされます。
雨を避けるために、雨雲の進む先を風上に向かって飛び、時にはそのために何百キロも移動するとのこと。それはえさである飛んでいる虫を得るためだということで、名前の由来でもあるわけですが、季節や場所によっては逆に雨雲を目指してということもあるそうです。
しかし、渡りでもなく、そのために何百キロも移動するということがまた驚かされることです。そのために飛ぶという事に究極に適応して進化したということでしょうか。
細く長い翼と言えば、超長距離をほとんど羽ばたかずして風の力で滑空して飛ぶアホウドリやミズナギドリなども同じですが、その飛び方は全く異なっています。さらにこれらの鳥は、テイクオフするのに水上での長い助走や、強い向かい風を必要とするのに対して、アマツバメはその場から飛び立てるということです。
それにしても、究極に適応して進化した姿というのはかくも美しくなるのでしょうか。
フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ジョナサン・ワイナー(著),Jonathan Weiner (原著)
樋口 広芳 (翻訳), 黒沢 令子 (翻訳)
早川書房 (2001/11)
ISBN : 978-4150502607
この本ももう随分と前に発行された本ではあるし、あまりにも有名ではあるので知ってはいたのですが・・・。
私の勝手な印象で、かの有名なガラパゴスのダーウィンフィンチたちにおいての、小さな環境内で見事に適応放散した特徴の、それぞれの種における解説本のように思ってました。
が、全然違いますね。
ダーウィンフィンチたちにリアルタイムに起こっている、個々のわずかな変異の差が、いかように自然選択によって影響されるかということを知ることができる本です。
自然選択による進化ということは、理屈ではよくわかっているつもりです。しかし、現実に身近にそれが感じられることを、と言われてもなかなか思い浮かばないものです。それはとても長い時間をかけて変化していくもので、実感としてというのは難しいものだと思っていました。
しかしこの本によって、ダーウィンフィンチたちに現実に起こっている事を知ると、実にわかりやすい。他の例として出てくる、農薬に対する虫たちやウィルスや菌などの薬に対する適応の話も、ああそうか、とこんな身近なところにも現実のわかりやすい進化の例があったと納得させられます。
実に面白い本です。なるほどピューリッツァー賞受賞もうなずけます。
イスカの話も興味深いし、これは超おすすめです。必読!
数の概念を6まで理解し、色や物質の違いがわかり、必要な単語を並べて単純な英文をつくり自分の意思を伝える事ができたかの有名なヨウム、アレックスとその研究者である著者の話です。
鳥の知能がその脳の小ささから、ほとんど反射的行動しか出来ないだろうと思われていた事実を根本からくつがえし、高い知能と感情を有することをアレックスとペパーバーグ博士は世に知らしめました。
現在では鳥類は一部の恐竜から進化したものという理論がほぼ確立されています。
恐竜の栄えた年数は我々人類の進化の歴史よりもはるかに永いわけです。
有名な映画ジュラシックパークのなかでヴェロキラプトルは群れで行動し発する音で意思を伝えあっていたと紹介されていました。
恐竜の時点で既にそれだけの社会性をもつほどまでに進化していたのに、その後の鳥への進化においてただ機械的な動作しかできない脳になってしまったということは不思議に思えませんか。
干潟において観察していると、その地へ渡ってきてある程度慣れてくると上空をトビやミサゴが飛んでも群れが飛び立つことはなく、ハヤブサが飛来すると一斉に飛び立ちます。単純な機械的動作ではないように感じられます。
この本で鳥達の知能の高さを再認識できます。
やはりこの本を避けては通れませんね。
動物好きなら誰もが知っている有名な書です。
著者のローレンツ博士は動物行動学という領域を開発した業績により1973年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。
やはりこの著者も動物に対する深い愛情からのとても奥深い観察眼による理解があります。
この本の表題は旧約聖書の魔法の指環を使って動物たちと語ることができたソロモン王のことを指しているとのこと。
著者はそんな魔法の指環がなくても動物たちと話すことは出来ると言っているのです。
コクマルガラスやハイイロガン等鳥に関してだけではなく闘魚や宝石魚などの魚や犬のエピソードもあります。
コクマルガラスは一度つがいになると死に別れるまで添い遂げるということです。毎年相手を変えるオシドリよりもよっぽどのオシドリ夫婦なわけです。
また、孵ったばかりの鳥のヒナは初めて目にした相手を母親と思いこむ刷り込みの話は有名ですが、マガモに関しては見たものよりも聞いた声によるとのことです。鳥の刷り込みに関しての研究はローレンツ博士に負う所が大きいとのこと。
動物の観察記だけではなく、動物を飼いたいと思ったときに、飼育時の手間や大変さを考えたうえでの選び方の注意点なども教えてくれています。
最後の「モラルと武器」の章はもっとも興味深い内容です。
一撃必殺の武器を進化させてきた種は、その武器の進化と並行して、同種内での争いにより自らの種の存続を脅かしかねない、その武器の使用を妨げるような社会的抑制を発達させる必要があったということです。
凶暴な猛獣が縄張争い等で相手を殺すまで争うことはしないような意識的か生活環境的な方法を身に着けることが必要ということです。
現在、生存している動物たちはこの武器と社会的抑制の双方をバランス良く進化させてきた種ということになります。
最後にそういった種達とは違い、武器だけを発達させ精神的にそこまでの進化に至っていない人類の未来を案じています。
この本が書かれたのは前書きにある日付から判断すると1949年の夏だとのこと。
大戦後4年ということでこういう締めくくりになったのかもしれません。
現在に至り、人類はその抑制を自らに作り出すことが出来ていると言えるのかは怪しいところです。
野生動物のためのクリニックを開いていた著者の所に運び込まれたひどい怪我を負ったカケスのヒナの成長し野生へ戻るまでの飼育、観察記録です。
この観察記は鳥の擬人化表現が問題にされたことがあったようですが、それが問題にされるほどのカケスの知能の高さをうかがわせる行動が多く記録されています。
とても印象に残っていることは、鳥が完全に信頼を置いている相手にはとても小さな声でささやくように鳴き声を発することがあるということ。「ブボがいた夏」「フクロウからのプロポーズ」にも同じような記述があったように思いますが、鳥との絶対的な信頼関係を築いたものだけに経験できることです。少しうらやましいような気もしました。
めっちゃおもしろいです。笑えます。
私も以前から、よく見ると黒ではない光沢のある紫の羽が美しいと思っていました。
でも、カラスを見てそんなことを感じるのは極めて少数派でしょう。
鳥好きのあいだでさえ彼らは嫌われ者だと思います。
黒ずくめの姿から不吉だし、死にまつわるイメージとか。
攻撃的な感じもあって恐さを感じる事も。
そう、なにより彼らのことを知らなすぎます。
そこでこの本の登場です。
とりあえずこの本を読んで彼らのことを知りましょう。
この本を読んだ時から、カラスは身近な親しみのある野鳥に変わります。
それだけではなく、ゴミ置き場のカラス除けの方法なども教えてくれています。
とても実用的でもあるわけです。
カラスのことなど知りたくもないけどカラスの被害にはあいたくないという方にもそういう点ではお勧めです。
ちなみに私は巻末にあるカラス度診断では7つでカラス度80%でした。
ま、なんとなくそんな感じはしてましたけど。
もの思う鳥たち: 鳥類の知られざる人間性 (いのちと環境ライブラリー)
セオドア・ゼノフォン・バーバー Theodore Xenophon Barber,Ph.D.
笠原敏雄 訳
日本教文社 2008-06
ISBN : 978-4531015559
さまざまなナチュラリストや研究者による、鳥には知能も感情もあることを示す観察記録を紹介しています。
この本の著者は、私にはあまり実感としてわかりませんが、これまでキリスト教文化圏でタブーとされてきた鳥をはじめとする動物たちの擬人化表現という手法で、鳥には知能も感情も個性もあり、また人間との意思のコミュニケーションが可能であるという結論を述べています。
ブボもアレックスもロレンツォも出て来て、既に読んでいる鳥達の話が出てくるだけで親近感を持ちます。
人間以外の鳥をはじめとする動物たちにも心があることを人間は改めて認識し、動物たちが我々人類と同等であり、地球上において我が物顔でふるまい自らの利益だけしか考えない環境破壊等をやめるべく、考えを改めよとの喚起をしています。
本当にそうあるべきだと思いますが、私には現在の経済至上主義の世の中ではとても難しい事に思えます。
世界的規模で人口が極端に減少するような大規模で破壊的な事象でも起こらない限り、人類は自らの行いを見直し、地球の支配者のようなおごりを捨て、自分たちの眼前の利益よりも動物たちや環境を重んじることはないと思います。
現に身近なことだけでも例を挙げれば、都は東京オリンピックの招致運動をしていますが競技場の一つとして、いまや渡り鳥たちにとって残された貴重な場所である葛西臨海公園を改築して使用することなどを予定に入れていますし、未だに全く解決していない福島県の放射能汚染という問題が現実にあるにもかかわらず、何の対処法も持ち合わせないままに原発を始動してしまっています。
残念なことですが、人類がこの本の著者の言う様に考えを改めない限り、今のままではどんどん地球を蝕んでいく地球にとっての癌細胞的存在でしかないように思えます。
Birds of the West Indies (Princeton Field Guides)
Herbert A. Raffaele Allan Keith
Princeton Univ Pr 2003-09-02
ASIN : B003WQAMT8
この本はカリブ海にあるキューバ、ジャマイカ、ハイチ、ドミニカ、プエルトリコ及びその周辺の島々にいる鳥のイラスト図鑑です。
実は東南アジアにいる鳥達の図鑑を買うつもりが間違えて買ったものです。
West indiesをインドの東側と思ったんでしょうね。バカ丸出しです。
ただ、この本のイラストもかなり良くてシギチ達もどこかかわいらしいタッチで描かれています。
イラストの良さもあって日本では見る事が出来ないオウムや美しさこの上ないハチドリやTodyたちは見ているだけでも楽しいものです。
間違えて買ったものですが、結果オーライといったところでしょうか。
いつの日にか、と鮮やかに色とりどりの鳥達の棲む森へと思いを馳せるのも、また、楽しいことではありませんか。
≪ 番外編~ひどくがっかりさせられたもの ≫
DVD 極楽鳥 魅惑の求愛ダンス
日経ナショナルジオグラフィック社
極楽鳥のDVDなんですね。
コスタリカのQuetzalやTodyと同じくしてとてもとても見たかった鳥、Birds of Paradise なんです。
National Geographicから発売されると知り、とても期待して購入したのです。
撮影者が10年の年月をかけて全39種の撮影に成功したという月刊誌の企画と連動したものです。
このジャケットを見ても、それはもうとてもとても期待が大きかったのです。クリックすると少し大きく見れます。
極楽鳥はそれぞれの容姿が独特で美しいことだけではなく、求愛の仕方もそれぞれに独特で魅力的なことが知られています。NHKやビックリ動物映像などのテレビ番組、CMなどでも2,3種の映像は見れますが全39種というのはすごいことだと思います。
BBCのLIFEやEARTH等の動物ドキュメンタリーが大好きな私は、誌面でこのDVDの発売を知り、待ってましたとばかりにamazonに予約注文をし、今や遅しと送られてくるのを待ち構えていたのでした。
amazonから入荷が遅れるとのメールがあったので、本元のナショジオに注文し直したほどです。
とても楽しみにしていたんですけどね。
内容は極楽鳥の映像集ではなく、いかに困難な撮影だったかという撮影者たちのドキュメンタリーでした。
45分ほどのDVDですが、その多くは撮影者たる人間の映像で、あい間あい間に結果どういう物が撮れたかという感じで鳥の映像が入ります。
鳥も3種類ほどで他はあっても一瞬の映像でしかありません。
元々、National Geographic自体がそういう傾向のものであったのかもしれません。それを私が知らなかっただけなのかも。
しかし、このジャケットを見る限りにおいては、極楽鳥の映像が主で見られるように思うのではないでしょうか。あろうことか、この手のものでジャケットで騙されるなんて思いもしなかった。その手のものよりもひどい気もする。しかしなぁ~!内容との違いがひどすぎませんか?
Birds of Paradise: Revealing the World’s Most Extraordinary Birds
Tim Laman, Edwin Scholes
そして、こちらが同じ企画と連動している写真集の方。
DVDで何とも言えないがっかり感を味わってはいたのですが、本家のNATIONAL GEOGRAPHICのサイトを見てみると写真集が既に発売されているとのこと。
こちらは4,000円弱でamazonでも注文できたのですが。
amazonのカスタマーレビューを見ると五つ星が多いのでこちらは大丈夫そうなんだけど、やはり不信感いっぱいになっていてなかなか注文できずにいたのです。
それでもやはり見たさいっぱいで、止めておけば良いのがわかっているのに注文してしまったんですね、ばかだなぁ~!
率直な感想としては極楽鳥の図鑑ではなく写真家の写真集ということです。
鳥の画像が全く十分でないのと、背景や鳥以外の画像による無意味なページの使い方に、これまたとても納得できないやりきれなさが残ります。
amazonの中身拝見で冒頭の画像を見ることができますが、見開き2ページを一枚の画像で使い、片側の一ページは背景だけという画像が何枚にもなります。この一ページを使っている背景は全く無意味としか思えない。こんな風にページを無駄にするのならもっと肝心の鳥達の画像を見せてくれればいいのにと。
そしてやたらと撮影者たちの露出が多い。ほんとに出たがりな撮影者たちで、もううんざりという感じ。この、サイズも大きく重く、値段もそこそこ高い本を買う人は、人ではなく極楽鳥を見たくて買うのではないだろうか。そんなに誇らしげに自らを露出させなくとも、十分に美しい鳥達の姿を見させてくれさえすれば、その方がよほど評価も上がり感謝もされるのに。原住民の方々も見開き2ページで十分だろう。とにかく鳥以外の不必要な画像が多すぎる。
あれだけカラフルで特徴的、しかも求愛のダンスにもそれぞれ独特で興味深いものがある鳥達なんだから、それぞれ一種だけでも一冊の写真集、DVDが出来る鳥もいくつもいるのではないでしょうか。
もう少し多くの画像を見せて欲しかったという思いでとても残念な内容でした。National Geographicのこの写真集に関わった人の中には、本当に鳥が好きな人はいないのだろうと思ってしまうような内容でした。